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ファンキーちゃうやろ!
映画『ゲロッパ!』 2004.12.27 Wac@映画生活に投稿 改稿2004.1.7
最近、映画館で腹の底から笑える映画に出会うことが少なくなって、非常に不満でした。笑いに関しては、映画よりTVヴァラエティの方が数段上いってるじゃないよ、って思っております。大声出してゲラゲラ笑うってのは、何も家でTVを観ているからだってことは、ないはずです。映画館ではあまり笑えないという人もいるかもしれませんが、少なくともわたくしに関して言えば、どこであろうが笑う時は笑うのであって、明らかに映画で観客を笑わそうとする試みは衰退しているのかと思っていましたが、この映画は笑わしてもらいました。爆笑です。ほぼ全編。
おまけに泣かせ場面もあり、終わり方も爽やかなもので、最後は鼻水まですすっている始末。
わたくしも他愛も無い奴です。
ソウルを歌ったりなどしておるわたくしの弟に、この映画で爆笑したと話したら、「アニキ、それは、ちょっとユル過ぎやで。」と言われた。まぁ、その通りかもしれない。が、感じたことは嘘ではないのだから、そのまんま書きます。
西田敏行さん。ベテランといえども、いつも最高のパフォーマンスを画面に定着させるのは困難なものです。TVの『白い巨塔』での西田さんは、わたくしにはもうひとついただけません。でも、ここでは絶好調でしょう。監督のねばりと篤い信頼を感じます。
常盤貴子さん。はっきり言って今まで誤解していました。この役、はっきり言って当たり役ですよ。もう魅力全開。めちゃくちゃリアリティあります。このような人情噺にはうってつけです。(うーん?褒めてるのかなぁ?いや、褒めてるんです。人のあしらい方とか、もう素敵です。)
山本太郎さん。大好きです。ペーソス満点。
岸部一徳さん。この方も映画でこそ、最高度のパフォーマンスが出ますよ。全く。
「ファンキー」って宣伝したのが、少しずれていますかね。あくまでも本当に一般の日本人向けに作ってありますから、折角いい曲使っていても、使い方に思いっきりが欠けてますね。(楽曲使用料だけでハラハラもんだったでしょう。)井筒監督は比べたら怒っちゃうだろうけど、タランティーノさんみたいに、ここぞって時に、ドッカーンとたまらん曲ぶちかましたりしてくれないんですよね。曲の入りが微妙にフェードインだったり、ちょっと自信なさげ。その分、楽曲に気を取られることなく、ストーリーにのっていける。
ソウル、R&Bファンには、物足りないでしょうね。全然ファンキーじゃないもの。
あくまでも、そっくり芸人、物真似芸人の魂(ソウル)を描いとるんやもんね。その着眼点はいいけれど、この手の映画の売り方は難しいところですわな。パンフも何の勘違いかおしゃれすぎて買う気がしない。
でも、娯楽の王道なのにね。
王道ってもう古いのかしら?
おしゃれすぎたり、通ぶったりしないようしないよう、気をつけている井筒監督の気配りが透けて見えてきます。いい人なんだろうなぁ。
井筒監督のTV「虎ノ門」での映画語りは、少しTV的過ぎて極論が多いので必ずしも共感できないことが多いですし、他人の映画を観る態度はあまり好きじゃないのですが(真似して映画館でしゃべる人増えまっせ。)、この映画は大好きです。
脇が豪華で、この辺も監督の人徳か。篠井英介さん、寺島しのぶさん、藤山直美さん、根岸季衣さんなんかの登場シーンは、本当に日本映画観られてよかったなぁと思います。(子役の太田琴音ちゃんも、上手いですなぁ。ダコタちゃんばかりやあらへんで。てなもんで。)長塚圭史さんも初めてでしたが、いいですねぇ。
西田さんと寺島さんの場面は、ほんの少しの匙加減で、目も当てられなくなるようなベタなコント。いやぁ、よくぞ、粘った。そこいらの若手芸人に負けてなるものかと、旬の演技派とベテランがすれすれのコントに挑む心意気。皆さんチャレンジャーやなぁー。
作品全体に、ワイド系のレンズを多用して役者さんを近くから撮っているので、迫力と臨場感がある。これは、ヴィデオで観ると、かえって凡庸な画面に見えるかもしれないが、監督の映画館のスクリーンでこそ勝負したいという意気込みが伝わってくる。
しかし、どうしても納得できない減点部分が2点。
今どきのヤクザは、ソウルミュージックには詳しくても(「マザー・ポップコーン」で踊る岸部さんと藤山さんの面白いこと!)、ヤクザ映画なんか観てへんで、というギャグかとも思えますが、『日本侠客伝 総長賭博』はないでしょう。※ヤクザ映画みたいなもんみんな似たような題名や、というジョークとも解釈出来ますし、中年ヤクザ=ソウル、若者ヤクザ=ヤクザ映画という図式で世代ギャップを際立たせようという意図も分からないではないが、はっきり言ってこれは笑ってはいけません。少なくともここに実在する名作を混ぜ合わせたようなまがい物を出してこられては、折角の「全編まがい物」というこの映画のテーマが逆にぶれてしまいます。こんなことでも、急速に気が萎えてしまう観客もいるってことには、もう少し気配りのほしいものです。日本映画を愛するがゆえの苦言です。
もう一つ、最後にブラスバンドが、あの大名曲(観てのお楽しみ!)を演奏してくれて、「やってくれるじゃないの」ってウルウルしながら、画面の西田さんと全く同じタイミングで、「ヘイ、ヘイ、ヘイ!」って心の中で唄っちゃったわたくしですが、そんな名場面なのに途中で曲変えたらダメですよ!!
あそこをちゃんと一曲で盛り上げていたら、折角の素晴らしいエンドロールも更に映えたでしょうに。
それにしても、三河の海の美しさよ。
なかなか乙なロケ地を選んでくれたもんです。
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『ゲロッパ!』(2003、井筒和幸監督)
2003.12.27.新文芸坐にて
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※改めて言及するまでもないが、「日本侠客伝」シリーズ全11作(64〜69)と『博奕打ち・総長賭博』(68)は全く別のシリーズである。「博奕打ち」シリーズ(67〜72)は全9作。
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