A little is enough .

映画『eiko』 

        2004.3.1.Wac@映画生活に投稿、 2004.3.22.改稿


麻生久美子さんの待望の主演作。
わたくしは、麻生さんのファンとして、いそいそと初日に観たが、なかなかの盛況ぶりが嬉しかった。
で、少なくとも麻生さん、沢田研二さん、阿部サダヲさんのファンの方にはお薦めです。
役者さんの持ち味を上手く生かしつつ、新たな面を見せてくれる作品だと思います。
設定にやや現実感が乏しいので、その部分でつまづくと映画に入り込みにくいかもしれませんが、ファンタジーとしては、明快なストーリーと、温かな人間感が爽やかです。

多分これから観る人のためには「テーマ」が何かについては、書かない方がいいでしょう。
重くないということが、この作品の最大の美点でしょうか。昨今、リアルで過酷な描写や、また大げさなフィクションに食傷気味の方は、このさっぱりとしたちょっといい話は、新鮮かもしれません。
ただ、独り言の多い脚本は、それが様式だとしても、ややぎこちない。
また、役柄をもっと掘り下げればもっと説得力が上るのに、と一方で思いながら、でもそれやっちゃうとファンタジーとしての軽みが崩れてしまう。そんな風に、現代を舞台にいいお話を作る難しさも感じました。少なくとも、実際に詐欺に遭った被害者がこの作品を楽しく見られるとは思えない。

ただ、深い描写よりも、さりげない手触りが心を動かすこともある、そんなことを考えた映画でした。

わたくしは、専ら役者さん中心で観てましたが、なかなか素敵な表情が楽しめます。(玉山鉄二さんはちょっと物足りなかったなぁ。)
南果歩さんが意外な役で、はまっていてびっくり。

麻生さんは、映画女優としてのこれまでのイメージと、カルチャー雑誌などの媒体で徐々に確立してきたファッション、ライフスタイルのモードを代表するイメージのはざまを上手く繋いでいます。ちょっと頼り無い主人公エイコに、寄り添い励ましていくような麻生さんのあり方が、とてもやさしい。
冒頭の淡い印象の佇まいから、背筋が伸びていくように変わっていくエイコの姿に、心をそっと転がしてくれるようなそよ風を感じました。
わたくしはこの映画を観て、確かに少し元気になりました。
演技派とか実力派という言葉は、あまりかの女には馴染まないかもしれないなぁ、とこの頃思うのですが、場面に漂う情感、キャメラに対する親和性はやはり絶品だと思います。
わたくしの趣味から言えば、もっと緊迫感のある役どころが見たいところですが、それにしてもこういう気張らない役をこなしてこそ。次々にイメージを裏切っていってほしいものです。

また、役者さんたちが映画製作を牽引する人気と力を蓄えつつあるのかな、ということをおぼろげながら感じました。そして、そういう役者さんたちの魅力を上手く引き出すことの出来る監督が必要とされていることも。加門監督はTVのトレンディドラマ出身。さすがに役者さんの魅力的な表情を捉えるのに長けていますね。

不満な点。DLP撮影に様々な工夫の跡は伺えますが、画面にやや奥行きが足りないのがもったいないです。(映画館の人に訊いたところ、上映もDLPだったようです。)
役者さんの表情は申し分なく捉えられていますが、風景には惹きつけられる魅力を感じません。

また、上映環境の問題かもしれませんが、音声の特徴として、麻生さん、沢田さん、大杉蓮さんらの特徴ある「声の魅力」があまり伝わってきませんでした。

ライヴ感溢れる音楽がかっこいいが、音楽の音質が申し分なくても、俳優の声が上手く再現できないなら、少なくともミックスに問題がある。

しかし、さてこの映画を全体として評価するとどうかと言うと、不満はいろいろある、でも小粒な作品ならではの魅力がある。ひとりでそっと楽しみたいが、声を大にして人に薦めたいわけでもない。と言うのが偽らざる感想なんです。小規模制作の作品だから、真剣に応援してあげたいけれど、そうすると何か、わたくしにとっては嘘っぽくなってしまう。難しいなぁー。


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『eiko』(2003、加門幾生監督)
2004.2.28.テアトル池袋にて


       

       
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